雑誌のはじまり

久しぶりに雑誌を買った。

KING (キング) 2006年 10月号 [雑誌]

KING (キング) 2006年 10月号 [雑誌]

20代後半の男性をメーンターゲットに、ライフスタイルの提言、コラム、ファッションなどあらゆる情報を盛り込んだ総合誌路線を打ち出した、とのこと。
創刊号は23万部を発行。
他の20万部発行クラスの雑誌だと、『MEN'S NON・NO』『Zipper』『anan』など。
TVCMもよく見かけるし、車内広告も力が入っている。
知り合いから教えてもらったのだが、講談社の社内では、こんなところにも、あんなところにも、王王王王王王。全面的に若き日の王状態が展開されていたようで、そんなやけくそなプロモーションも嬉しく思えた。


雑誌不況の中で、こういった気合の入った大型誌の登場は、雑誌好きとして素直に喜びたい。
応援の気持ちもこめて、コンビニで陳列されているそれを手にとってみた。


・・・重い。
雑誌ってこんなに重かったっけ。
『KING』の表紙はそんな私に語りかける。

いまこそ男は、堂々と王(キング)になれ!

なるほど。
キングたるもの、この重さにへこたれてはならない。
というメッセージなわけだきっと。


私が雑誌にはまっていたのは、大学生のころ。
一番好きだった雑誌はこれ。

文藝春秋が発行してした『Title』。捨てずにとっていた。

関係ないけど井川遥


とことんワンテーマに絞ったページ構成。
142ページ中62ページが特集(2001年4月号)という大胆さ。(もちろん、この142ページには広告ページが含まれている)
月ごとにテーマは変わるわけだから、
もはや、何の雑誌なのかと。
でも、月ごとに組まれる特集は、
「そうそう! それが気になっていた!」
といった潜在していた興味を喚起するに的確な内容であったし、
私の周りの同年代にも、『Title』読者が何人か居たので、
確実に「20代男性向け雑誌」ではあったと思う。


そんな『Title』に心を鷲掴みにされ、
毎号毎号発売を心待ちにしていた。
あの頃、私にとって、雑誌は確実に教科書であった。


しかし、『Title』はリニューアルしてしまった。



今の『TITLE』。


メーンターゲットが明らかに変わってしまった。
タイトルが大文字に変わってしまったリニューアル創刊号を、
私は願うようにめくっていたのを思い出した。
当然のことながら、私が願っていたような空気は、そこには無かった。


でも、大文字の『TITLE』はリニューアルしてから、現在も発行されている。
リニューアルは正解であったのだ。


雑誌というメディアの在り方は変わったと思う。
情報を得るためだけなら、インターネットがある。
面白い言論が、インターネットにはある。
その雑誌にしかない空気を如何に醸せるか、
これがいい!といった方向を如何に自信満々に指し示せるか、
そしてそれが新しい消費とリンクしているのが、
雑誌がインターネットに対抗できる在り方なんじゃないかなと思う。
私はターゲットから外れてしまったが、『TITLE』はうまくいっていると思う。


『LEON』の成功は、いまさら言うまでもないが、「ちょいワル」などの新しい価値観、世界観を提示出来たのが大きい。
その世界観に、高額商品の広告需要が乗っかかる。

「若いことが損と思っている20代、30代前半の男性に、面白いことがいっぱいあるということを伝えたい」
女性誌に独占されてしまった食や快楽の情報を、フリーター、ニートとレッテルされている世代の男性側に取り戻したい」
『KING』編集長 原田隆氏
(9月20日 読売新聞夕刊より)

『KING』を読んでみた。
なるほど。重さの原因はこれか。
総合誌ということでページ数が多い。
350ページ。
そこに多岐に渡る情報が載る。
グラビアや、ファッション情報、明らかに『Tokyo graffiti』なものまで。
コラムもなかなか面白い。
これで600円ならかなりお得ではないか、
と今になってはそう思うのですが、
読み終わってすぐ感じたのは、疲労感。
正直疲れました。
多分、テーマは「男らしさ」。
この暑苦しさがまたこってりしていて、疲れてくる。


「20代、30代前半の男性」をターゲットにしているということだが。
そこは、フリーペーパーのビジネスモデルが確立された最強の紙媒体『R25』の土俵なわけで。
ワクワクするような新しい価値観や世界観を提示してくれないと、
情報の羅列ではなく、新しい価値観を構成する要素を、
独自の見せ方、切り口、編集で提示してくれないと、
もはや、買いたいとは思わない。

IT革命と雑誌の命運がセットで語られる風潮はなんとかならんかね。そんな単純なもんじゃないと思うよ、雑誌の底力は。少なくとも『Title』はIT特集もやれば、雑誌特集もやるといった、雑誌が本来持つ神出鬼没性を大事にしたい。来月は美少女だよ。
(『Title』2001年4月号 From Editorsより)


『KING』ならずとも。
一読者として。
「20代、30代前半の男性」をまるごと巻き込むような、
そんな雑誌の底力。
期待しています。