No.24

ムーン・パレス (新潮文庫)

ムーン・パレス (新潮文庫)

ここ最近の通勤電車の楽しみといえば、この「ムーンパレス」だった。「ムーンパレス」のおかげで、オレは通勤電車がちょっと楽しく感じられた。2ヶ月ぐらいに渡って、勿体つけるようにちょびちょびと読んでいたのだが(約450ページあるのだ)、最近読み終えた。
本を貸してくれたMさんと、この前飲む機会があって、「ムーンパレス」の話もしたのだが、最初の100ページぐらいは完璧じゃないかという話になった。
青春小説の代名詞は「ライ麦畑でつかまえて」なのかもしれないが、オレは断然「ムーンパレス」を支持したい。ライ麦も好きだけど、「ムーンパレス」の救えなさと真っ当さと気恥ずかしくなる真面目さにはホント共感する。憂鬱な通勤電車の中で、オレは何度も鳥肌が立った。
公園で生活するのも、本を売ることで口に糊をするのも、そして、そんな退廃的な生活を良しとするのも、ポール・オースターの洗練された文章で、とても美しい風景に見えた。オレが送った学生生活は、花見をしてたらいつの間にか池袋駅の駅員室で横になっていたり、初デートで行った映画館で爆睡したりと、ロクなもんじゃなかったが、「ムーンパレス」のおかげで、美しい風景に変換することが出来そうだ。退廃的であることの美しさもダサさも、この一冊には詰まっている。
ページをめくるたびに甘酸っぱい、そんな青春小説に出会えたことがとても嬉しい。



後で知ったのだが、ポール・オースターは「スモーク&ブルー・イン・ザ・フェイス」の原作、そして脚本も手がけている。好きな映画だ。なんかそういうつながりが、また嬉しくなった。



明日からGWがはじまる。
明日買い物に行く以外は何にもすることがないから、本腰入れて部屋にある手付かずの本達を片っ端が読破しようと思う。
「ムーンパレス」の様な良書に、オレはいくつ出会えるのであろうか?
今から楽しみです。