ダウナーのはじまり

テンションが落ちたとき、私は、それを回避する術を知らない。むしろ、回避の方法を知ろうともせず、こういう気持ちはありのままに受け入れるべきだ、と落ちるところまで落ちきっていたのだと思う。しかし、最近は、ダウナーってのは美学的な差し引きをしても全然おいしくないと気付き、今回のテンションが落ちている件について、私は前向きに乗り越えてみようと思ったのでした。
と、ここまで思うのに2日要しているわけで。
無理はするなよ、という声も聞こえなくもなくって。
今日もテンションは低い一方で、そしてタイミングがいいんだか悪いんだか、階段で転んだりもして、出張の電車乗換えを間違ったりもして、もっと深いところまでテンションは下がっていくのです。何もかもやればやるほどうまくいかない日があって、それがたまたまテンションの低いときなのもしれないのですけど、たまたまと思えない業の深さを勝手に感じ取って、泣きたくなっていました。
あー、泣きてーなー。
手に余るほどの不安が一気に押し寄せる。普段、押しとどめていた不安が堰を切ったかのように、押し寄せて、私はそれに飲み込まれる。
私は、回避する術を知らない。
本を読んでも、音楽を聴いても、ダメだ、ってことは大学の頃から知っている。
昼の渋谷マックで、私は一人、不安。アイスコーヒーで出来た窪みに、隙間無く不安が入り込んでくる。ダブルチーズバーガーのバンズのパサつきに、断絶を感じる。
3ヶ月に1回のペースで私に迫ってくる不安は、大袈裟だけどホントこのくらいのスケール。参る。



しかし、今日はいい加減、飽きた。
もういい。ダウナーいらない。
ちょっと今日は今までと違うことをやってみようと思った。学生の頃には出来なかった大人的な行動でもって解決出来るなら、歳をとることは素晴らしいことじゃないか。大人なのにいつだってアッパー系、なんてとても素晴らしいことじゃないか。



まずしたのは衝動買い。
土曜の雨で寒くなるっていうから、私はダッフルコートを買った。会社帰りに寄ったので、スーツの上からダッフルを試着。カジュアルなダッフルなので、スーツの上から着ると、胸元にフォーマルなシャツが覗け、普段であれば、それだけで一日分の焦燥感が書ける程の非常にいとしい状況なのだが、私は全く心弾まず、無表情を貫き、でも気に入ったので買った。もっと楽しそうに笑えばいいのに。
次に行ったのは、接骨院
肩が凝っているのがダウナーの原因かと。精神的なものに見えて、意外に肉体的なアプローチが効くのかと。しかし、全然会話弾まず。普段なら笑わせに行く位のモチベーションが、「はあ、そうですか」しか言えない。女の子と話していて笑わかしに行かない私。どうしようもないなと思った私は、最後の策としてバーに行く。
こうなったら酒の力を借りて、さっさと落ちるところまで落ちきった方がいいと思ったのだ。
失敗だった。
実際、落ちきった。しかし、それで終わりではなく、そこでまた穴を掘って、深く深く落ちていった。頭を抱えてギムレットを飲む男。そんな店入りたくない。申し訳なくなって、私は1時間程で店を出て、家に帰った。



全然、うまくいかない。
ダウナーは大人になってもダウナーで、子供が流す涙と大して本質は変わらない。いや、泣けないから、もっと辛いかもしれない。やっぱりダウナーがあってアッパーがある。ダウナーを自分の意志でもって上手く処理出来たら、アッパーがきっと味気なくなる。大学生の頃はそれをわかっていたのだ。今回は社会人になった私を過大評価していたようです。大人だって喧嘩するし、大人だって泣くときは泣く。でも、大人だから、みんなそれを見せないだけで。
明日の朝になれば、今日思ったことがあっさりどうでもよくなるものだ。そう思って大学生の私はふて寝をしていた。



今の私は今日のしたこと思ったことをここに記す。
書くことでなんだか気持ちが晴れてくる。
テンション低いです。
今の私は、ちゃんと言える。