『リアクティヴィティー』のはじまり

非常に愉快で刺激的な試みだった。
テクノロジーがこの先、絵画を描く筆と同じような扱われ方をするのなら、出展者が提示した作品だって、今までの延長線上にきっとなる。
「展示会にいくのだもの、金払った分インテリにならなきゃな」
と、溢れんばかりのやらしさでもって、それ相応の考察を一応してみる。
それからは、キャッキャとマウスを振り回すオレ。その隣で呆れるYちゃん。
12畳程の白い部屋の壁一面がモニターになっていて、ワイヤレスのマウスに反応して、映像が流れるというもの。激しく動けば動くほど、映像が過激になっていく。
いやね。めちゃくちゃ面白いんですよ。展示会がこんなに汗かくものだと思わなかった。
他にも面白い装置がたくさんあって、そのほとんどの作品の完成は皆に委ねられているのです。
キャンバスがあって、絵の具があって、筆があって、好きなように描いていいですよー。ふざけていいですよー。って言っている。
据え膳ですよ。喰わぬは男のアレですよ。
思いっきりふざけてまして、オレは。
思いっきりふてくされてまして、Yちゃんは。



何年か前に上野のMOMAに大学の友といった時も、オレ達はゲラゲラ笑っていた。
そこで淑女をエスコートしていた紳士には、顰蹙を買っていたような気がする。
オレ達は、上野の森で、その日一番モテない男衆であったことよ。
彼とオレ達が決定的に違うところ。
場を読むこと。



plan-5「男前は黙してエスコート」



でも、この男前に関しては、正直、当分先延ばしでもいいと思った。