がっかりのはじまり

将来の夢は『銀座人』になることです。



『銀座人』という人種が居る。
居ることにする。



銀座の映画館で女性同伴の髭をたくわえた男を見たら、
そう、彼は『銀座人』と思って間違いない。
その日、オレは『銀座人』を見つけ、キャッキャと喜んでおりました。
やっぱオーラが違う。
と、ひとり、納得。


しかし。
その日、『銀座人』は豪快に笑ってました。
人と違うところで大声で笑ってました。
雑学をひけらかす笑いをしてました。
サンドイッチを食べてました。
サンドイッチの入っていたパッケージを、
バリバリバリ!っと音を立てて、捨ててました。
携帯の着信音を鳴らしてました。
ボタンの音も鳴らしてました。
上映中にメールをしてました。
ディスプレイの光を館内に漏らしました。
つまらなくなったら寝てました。
その挙句に、いびきを立てて寝てました。



何処にでも居そうな人だが、考えてほしい。
彼等は、平日の昼間から銀座で映画を嗜む層なのだ。
いわば、富裕層なのだ。



銀座。
銀ブラ
ミリオン銀座。



銀座にはやっぱりドリームがあると思う。
アメリカで言えば、NYであり、
フランスで言えば、パリであり、
千葉の渋谷で言えば、柏なのだ。



NYに行ったら、アメリカ人は皆短パンでホットドッグを汚く食べていました。
パリに行ったら、フランス人は絵なんて描いてませんでした。
柏に行ったら、マンバがいっぱい居ました。
そんなのやだ。そんな柏やだ。水戸まで行けよ、水戸まで。



『銀座人』には『銀座人』の生き方があると思うのです。
犬は、悪趣味なトリミングをされたプードルがいいのです。
明らかに同伴出勤的な男女関係を露骨にしてほしいのです。
気が違える程のショッキングピンクな髪の色がいいのです。
「パーティー」とか、「ファミリー」とか、言ってほしいのです。
一般人じゃわからない文化を形成してほしいのです。
『銀座人』にドリームをみたいのです。
『銀座人』に憧れてたいのです。



がっかりさせないでほしい。



募金箱に一万円入れて、
赤い羽根を胸に挿して、
スキップするような、
そんな初老にオレはなりたい。