10年後のはじまり

わけあって「10年後の会社と私」といったテーマで、レポートを書くことになった。ガチンコなテーマである。困った。
「男前市場における長期的展望と短期的マーケティング戦略」とかいうテーマでのレポート提出であれば、嬉々として図書館に足を運び、資料をまとめ、マーケティングリサーチという名の、夜遊びを敢行したのち、紐でまとめざるを得ない暴力的分量のレポートを、というか、それはもはや書物なのだが、軽々とこしらえることが出来るのだが、残念なことに今回のテーマは「10年後の会社と私」なのであって、そういったことをいっさい考えたことのない私は、とっかかりすら見えず、困っているのである。まったく持って、絵に描いたような大人が考える、大人過ぎるレポートなのである。


10年後。


会社のことはもちろん、自分のことも見当がつかない。
10年後といえば、35歳なわけで、正直、あんまり何も変わっていないような気がする。15歳の私が25歳の私を想像したとき、想像上の25歳の私は、地球を救いかねないほどとんでもない活躍をみせていたのだが、今、25歳の私は、おどろくほどに15歳の私のままだ。スーツを着たりはしているが、盗んだバイクで走り出しかねない。かねないのだが、25歳の私はそんなことをしたら、捕まることを知っている25歳なので、盗んだり走り出したりしませんが、35歳の私も、そんなバイクを目の前にしてじりじりしてほしいと思います。そういった類の感情は10年後もきっと大事。
で、
そんなとき、隣で、『おい、一緒に走ろうぜ』と肩をたたいて、ヘルメットを差し出し、親指を立てて『GOOD LUCK!!』と言ってくれる「会社」がいてくれたらうれしいな、と今書きながら、思いました。


普段は激務の会社が見せる、一筋の光。優しさ。
手に持ったヘルメットがまぶしい。
そうか。
ツンデレの良さとはこういうことか。
会社を擬人化。
そんなお互いに萌えられる会社と私が10年後の理想。


というわけで、
ツンデレメガネ女子社員を主人公にし、幼馴染の男子社員とのやりとりに「10年後の会社と私」を重ねた社内恋愛ものを、マンガ形式でレポートを提出したら、きっと、私の気持ちもわかってもらえるんじゃないか。そう思うのです。


「ちょっと。君…、これじゃ、レポートって言わないよ」と上司。
「なによ、あんたのためにかいているわけじゃないんだからね!」と私。


ここまで含めてのレポート提出。


会社と私の10年後が見えません。