再読のはじまり
- 作者: 坂口安吾
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2000/05/30
- メディア: 文庫
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しかし。
これが。
俄然おもしろい。
うわ。なにこれ。こんな話だったかしらん。と思うほど新鮮に見えて、ページをめくる度にドキドキしている。
『堕落論』を再読する前、私は小林秀雄を読んでいて、小林秀雄がすごい!と今更ながら、熱狂していたのです。
で、私はすっかり忘れていたのだが、坂口安吾は『堕落論』で小林秀雄論を展開していて、ものすごくビックリした!
全く忘れていた。そんな安吾、すっかり忘れていた。
『堕落論』に収録されている「日本文化私観」や「堕落論」で見せる安吾の考察の深さにしみじみと頷き、「不良少年とキリスト」や「悪妻論」で見せる暴れん坊な安吾に手に汗にぎり、そして、「教祖の文学」で小林秀雄を見つめているその眼差しに同化したいと願っている。先日まで、小林秀雄がすごい!と感動していた私がめくる本の中、安吾は小林秀雄の姿勢(文章力は思いっきり認めている。萌え)を痛烈に批判している。
再読する本にまた教えられるものがある。
同じ文章なのに受け取り方が変わってくる。
私が忘れっぽいこともあるとは思うのだが、『堕落論』のそんな強度に感動した。
私は10年後も『堕落論』を読んで、たぶん、きっとまた、新鮮な気持ちになれるのだと思う。
本の出会いは何も新しい本に限ったことではないのだ。
本棚に埋まっている高校生の時に読んでそのままの本、もしかしたら、そこにもまた新鮮な喜びがあるのかもしれない。
再読に耐えうる本に私はいくつ出会えるのだろうか。
とは言っても、当然、未読の本にもそんな喜びがあるわけで、私は、部屋に積んである未読の本たちから、一冊適当に抜き出して読み始めた。マンガだった。かけてある輪ゴムを丁寧に外し、まだ皺のついていない本屋の紙カバーの感触を手のひらに、新しい出会いを楽しみにしながら、そのマンガを読みはじめる。
ふむふむ。
おもしろい。
ん。
あれ。
これって。
たぶん。
どっかで読んだ。
うん。
読んだことあるよこれ。
- 作者: 小田扉
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2004/02/28
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友人に勧められて、マンガ喫茶で読んだのを、思い出した。
別の友人にも勧められて、本屋で買ったのも、思い出した。
どんだけ忘れっぽいのだ私。
しかし、
結果的に再読に耐えうる本を見つけることが出来て、嬉しい。
とか、
一応
前向きなこと、言っておく。
本質は、自宅にそのマンガがあるのにも関わらず、マンガ喫茶でそれをほくほく顔で読んでいた私。
あまりにも強烈な自分のマヌケさに、目をそむけてはいけないこと。
再読することは、決して退屈なことじゃない。
本を通じて、自分の過去に対峙する。
恥ずかしい自分に対峙する。
ただひたすらに、悶絶するぐらい恥ずかしい記憶、その場の雰囲気、空気がよみがえってくる。
そこまで含めての再読の価値じゃないかと、
私は私を肯定してあげたい。
そして『堕落論』は、こんな結論に至ってしまう私のためにあるのだと思う。