モンタージュ理論のはじまり

戦艦ポチョムキン [DVD]

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戦艦ポチョムキン」という映画をご存知だろうか? 
映画がトーキーに移行するちょっと前の時代。ロシア人のエイゼンシュタイン監督が『モンタージュ理論』を或る一つの高みにまでもっていった記念すべき映画である。
モンタージュ理論』ってのは、ホントざっくりすぎるほどざっくり言うと、編集のことをさすのですが、例えば、
Aのシーン「道端に花が咲いている。風に揺れる花」
Bのシーン「阿波踊りのような変な踊りをしながら、道を通る男」
Cのシーン「道端でしんなりしている花」
という3シーンがあったとする。
A→B→Cという流れで映像が進んだら
「ああ、変な男の人が花を踏みつけてしまったのだな」
と思う。
でも、C→B→Aという流れだったらどうだろうか。
「うわー! あの変な男の人は、魔法使いだったんだ! ハリー・ポッターだったんだ!」
ということにならないだろうか。
説明になっているのかどうか、いまいち微妙なのですが、『モンタージュ理論』ってのは編集の妙をさすのだなと思ってもらえれば、だいたいあっていると思う。
1920年代に生まれた『モンタージュ理論』の手法は、いまなお、視覚伝達表現に多大な影響を与えている。


そんな手法を今に伝える視覚伝達最前線。
レンタルビデオ屋さんにあった。
AVコーナー。
どんなTVドラマにもどんな映画にも負けない強いメッセージ。
我こそは正統なるエイゼンシュタインの後継者なり。と。
AVコーナーにこそ、色濃く『モンタージュ理論』は息づいているのだと私は思う。


下半身にダイレクトに訴えかけるあの洗練されたパッケージデザインは、まさに『モンタージュ理論』を今に伝える匠の業。
私たちはそんなパッケージ職人の技術が集約された現代の芸術という名のピンク色のパッケージデザインから、そのAVが本来持つ意味に目をむけるのだ。一見大胆なカットのエネルギーたちが衝突したその刹那に垣間見える真実をたぐい寄せようとしているのだ。
レンタルビデオ屋さんのAVコーナーが殺伐としているのは、男達の戦場だから。AVを選ぶということは、ロシアの大地から80年もの時を越え送りつけられた挑戦に、ひとり闘いを挑むこと。己の審美眼の限界を探求する誰も助けてくれない孤独な闘いなのだ。


今日の闘い。

主演 夏目ナナ
監督 井口昇
18歳未満貸出禁止
『禁断の関係』

先日、satoreiさんから勧められた例のアレに闘いを挑んできた。


パッケージを凝視する私。
なるほど。
夏目ナナがおっぱいを惜しみなく提供している映画である。パッケージに提示されたカットの半分は、夏目はおっぱいを出しており、この作品の主人公と思われる夏目は服を着ていないで生活していると思われる。おそらく、時代背景としては縄文時代の話と見るのが正しい。
そうか。歴史物か。と私は思う。
しかし、見落としてはいけない。ジャケットで提示されるカットの残り半分の夏目はスーツを着ているので、ただの歴史物ではない。きっと裸パートとスーツパートの2部構成であるのだろう。過去と現代を行き来するタイムトラベラーが夏目ナナなのである。
タイムトラベラー夏目が、今の自分の恋人が、かつて生き別れた弟だと知り、原始時代にまで遡り、様々な色仕掛けを駆使し、家系をゆがめてしまう、そんなお話。多分。決め台詞は「やめて!!触らないで!!時空をゆがめるわよ!!」


そんなこんなで10分近く闘っていた私。いつも勝った負けたを繰り返しているのだが、流石に今宵は甲乙つけ難いいい勝負をした。と我ながら自画自賛である。