志村のはじまり

夜の12時に寝て夕方の6時に起き、夜の11時には床に着く実働5時間といった休日を過ごしては「体の休め方も板についてきたもんだ」と一人悦に入り、外を歩けば、頬を撫でる風に肌寒さを感じ「秋も深まってゆくのだなあ」と四季を訪ね、出社して席に着き、ノートパソコンを起動してもまだ肌寒さの余韻が残っているので「こんなところまで秋が忍び寄って…」などと感傷に耽っていたら同僚に
「顔が青いよ。大丈夫?」
と心配され、上で言ったことは全て風邪からきているものだとわかった休み明け。翌日はお休みを貰い、朝から家でずっと療養しておりました。

しかし、体が折角体調不良のサインをものすごいど真ん中ストレートでほおってくれているのに、オレはそれを受け止めることなく、「ナイスボール!」などどグリップを握り締め、金属バットで華麗にフルスイングして場外にホームランなので、前向き過ぎるのも考え物だな、と反省した次第。体は実に忠実に、オレの意識に異変を教えてくれているのに、オレは絶好の前フリと勘違いしてしまう。「志村、後ろ!」って体は教えてくれているのに、オレの志村は絶対後ろを振り向かない。

今回は後ろにあったものが風邪だったからよかったものの、例えばそれが骨折であったりしたらどうするつもりなんだオレ。と、今日のオレは、布団にくるまりながら、そんなことばかり考えていました。

そしてオレは多分、骨折したとしてもあくまで志村的な佇まいでありたいと思ったのでした。「最終進化!」などと叫び、両手両足を広げ、飛び跳ねるオレでありたいと思う。痛くてそれどころではないだろうけど、気持ちは、「最終進化!」でピョーン。
舞台上での「志村、後ろ!」も現実世界の「志村、後ろ!」も結局は同じこと。最終的には受け止めなくてはならない。その時オレは、出来る限りふざけていたいと思うのです。
避けられぬ苦痛があるとして、それにオレはこんな姿勢で向き合っていたいと、そう思うのですな。

気付いたら、18時だというのに窓の外はすっかり暗くなっていて
「もう10月なんだなあ。だっふんだ」
と、感傷に耽るふざけた一日。寒気はどこかへ行ってしまったようです。



志村る(シムる)こと以外に人を救う道はない。
風邪と志村と25の私と。
私は志村を抱きしめていたい。