恋のはじまり

どうやら、恋らしいですよ。
先日、元同期のOさんとサミットを開いたのだが、オレの中では、無慈悲で無関心で無表情の、クールメガネの名を欲しいままにしていたあのOさんが、唐揚げ定食の向こう、頬をほんのり赤くし、恋がなんたるか、恋が如何に素晴らしいか、について熱弁を振るっていて、オレはOさんのテンションの高さと、頬の緩みを目の当たりにし、どうやら、世界は恋らしい、という再確認で、今日に至る。こんなOさんをオレは知らないもの。
うむ。恋か。
Oさんはオレの今居る会社を辞め、見通し明るい業界の新しい会社に移り、オレなんかよりずっと高給取りでいらっしゃったのだが、以前のサミットでは「電車男」や「mixi」の話なんかをして、仕事の話なんかはほとんどしなかったから、ああ、この人も世の中から逃避しているのだなぁ、なんて、「こっち側」みたいな括りで、ちょっと安心していたのだ。
それが、恋をしちゃったもんだから、
「相手の分までチケット取った(相手の予定を確認してないのに)」
「相手から連絡くるまで、こっちからは電話もメールもしない(2日前にメールをしたっきり)」
などなど、そりゃあもう、めんどくさそうなやり取りを嬉々として語るわけです。駆け引きとはいえ、現実と向かい合って、相手のことを思って、生活しているわけです。
恋をすると綺麗になる。って女子伝説がありますが、その日のOさんも心なしか、メガネのキラリ具合が増していたようないないような。ちょっぴり男前が増していたような。
そんなわけで、どうやら、恋らしいです。世界は恋でかわるらしいです。


なんだか、楽しそうだなー。
といった感想と共に、オレも以前、何をしてもものすごく楽しい日々を過ごしていたことを思い出した。その時、オレの世界は確実に恋を中心にまわっていた。新しい視野を持つことが出来た。その視野で色々なことを知ることができた。まあ、新しい視野が必ずしも幸福だけをもたらすわけではないことが、オレはオレの恋でわかったのだが。
愛は重いっす。
しかし、恋の怒涛の勢いの前では、Oさんのその熱量の前では、先々を憂う行為なんて無粋すぎるので、Oさんの新世界に幸多からんことを願うことにした。


と、こんな感じで、さわやか友情路線で応援することにしたので、Oさんがうまくいった暁には、その見返りで、その女子の友達とか紹介してもらおうと思う。
Oさんは男前でクールメガネで高給取りなので、そういうの普通にしてくれると思う。
それくらい、マジでしてくれろと。
マジで。