愚痴のはじまり

愚痴はあんまり言いたくない側の人間だ。出来ることなら、愚痴と関わりの無い人生を歩みたいし、オレが愚痴を駆逐出来るだけのしかるべき資格を有しているのであれば、87発もの銃弾でもって愚痴を蜂の巣にして、ボニー&クライドばりのニューアメリカンシネマなわけである。
わけであるのだが、当然ながらそんな状況はないのでして、オレは愚痴と向かいあって生きていかなければならないと、日々覚悟しているのである。
愚痴は何も生まない。
これが愚痴の一つ目の嫌いなところだ。ちょっと考えれば、それはわかる。愚痴の答えはいつも「だから何?」である。
二つ目の嫌いなところは、愚痴は女の子と相性がいいことだ。可愛い女子ほど愚痴を言う。しかも、その愚痴はちょっとした自慢も入っていて、かなりうんざりする類の話であったりする。
男子が一方的に退屈な話をしようものなら、徹底的に無視しておいしい状況にするのだが、女子が一方的に退屈な話をするのは、やっぱり悲しい。
この前、一人昼飯を食べていたときに聞こえてきた話もそうだった。
女子「なんかさ、写メ送ってきて、とかって言われて、何かなあと思ったら、君の可愛い顔で癒してよー、とか言ってて、マジキショイ!って感じでー」
これだけでもかなりの鬱陶しさ。
対面の男子も、苦笑いしっぱなしであった。
そして、その女子は続けた。
女子「なんか、区役所の対応ってムカつかない?」
え?終わり?オチは?
女子の隣の席にかけていたので、その女子の顔を見ることが出来なかったが、いくら可愛くても、この話の流れは悲し過ぎる。
もっとふくらませる要素はたくさんあるはずだ。
オチがないのなら、せめて、女子っぽいところで「癒されると思って、ペットの画像を送った」とか甘酸っぱい発言でも繰り出して欲しかった。



愚痴に共感してもらえれば、それで女子は気がすむのだろうか?ホントか?何かそんな風に結論づけたくないオレが居る。
愚痴をこぼさなくていいくらい、昨今はたくましい女子が増えてきた、とオレは思う。たくましい女子の愚痴はそれなりに正しい筋道を通って、上手くいかなくて、ストレスをためている。だから、聞かせれるこっちは辛い。力になれないのが目に見えているから辛い。
「大変だね」
なんてのは誰でも言える。誰でも言えることをオレにあえてこぼしてくれている。と思えるほどオレは幸せちゃんではないから、愚痴をこぼされているなと感じたら、頭の中は4桁の数を四則計算で10にしたりして、思考を誤魔化す。



愚痴によって、何を求めているのか。「大変だね」なんて言葉に気持ちがこもってないのだって、知っているはずだ。わかりあえないという前提で話して、時間を浪費するぐらいなら、せっかく2人で話しているのだから、もっとコミュニケーションしようよと思う。そんな美味しいネタがあるなら、せっかくだし癒しの写メについて話し合おうよと思う。それは、きっと楽しい。
でもオレがもし、癒しの写メ話で、うっかりと調子に乗って
「おっぱい画像を送るといいよ」
となんて言ってしまったら、その時はたっぷり愚痴をこぼしてください。
おっぱいなオレに、笑えない愚痴をこぼして、戒めてください。
出口のない愚痴は、怒られることよりも、もっと辛いことだから。



愚痴の在り方にコミュニケーションツールをみる。
そんな風に愚痴を弄ぶことが出来るなら、女子はもっともっと素敵になると思う。
Aちゃんの愚痴を引用して最後にしようと思う。

オンラインゲームやってたら、見知らぬ外人に助けてもらって、英語話しかけられたんだけど、私、英語わかんないんだよねー

これだともはや、愚痴を装った秀逸なネタにしか聞こえません。