読書のはじまり

一回も目を通していない本のことをとやかくいうのは野暮ってもんなのは百も承知で、オレはこの日記を書かせてもらう。
電車の中で床に座り込んで、本をむさぼるようにして読んでいた君に言いたい。そう、中学生らしき白のハイソックスを覗かせている君に言いたいのだよ、オレは。オレにもそんな時代があったのだよ。読書しているオレを無性にアピールした時期があったのだよ。わかる。君の行為がオレにはわかる。オレもそんな読書体験があった。作家になりたい。そう思わされた原田宗典先生の本。オレは、家族旅行でそれをむさぼるように読んでいた。車の中でも。パーキングエリアでも。観光地、松島でも。布団の中でも。さあ、オレにも教えてくれよ。君はどんな本を読んでいるのだい?ドストエフスキー先生かい?太宰先生かい?それとも安吾先生かい?君の青春のはじまりをオレに教えてくれないかい?
覗き込んだそれは、紫がかったピンクのカバー。
……あ。ハリーポッター
ハリーポッターかよ!車内で座り込んで読む児童文学って、それテーマ読み違えているよ!作者、泣くよ!ってか、オレが泣く。赦しませんよ、そんな反逆。電車の床で座るなら、「文学らしい」文学を読みなさいよ!もしくは赤川先生読んでなさい。宗田先生を読んでなさい。そしたら、床に座る迷惑だって、赦してあげないことも無い。
はっきり言うよ。君は絵にならない。20歳になるまできっと気付かないから言うよ。ハリーポッターは家で読みなさい。人に迷惑をかけてまで読む本じゃない。多分。
こんなことを言っているが、オレは、それでも君に電車の床に座り込んで、ハリーポッターを読んで欲しかったりもしたりするのだ。強烈な読書体験は、誰も覆すことは出来ないと思うのだ。



でも、やっぱ、ハリポはどうかと思う。うーん。ごめん。理解できない。
文学らしいポーズで床に座るなら、ハリポはブンガク(あえて片仮名)から遠いところにあると思うから。
まー、読んだこと無いですけど。
とにかく、ベストセラーを堂々と読む感覚は、ブンガクじゃないから。
これは真実。
でも、褌一丁でハリポなら、それは文学。
だから君、頑張れ。