共存のはじまり

昨今、台風上陸が多いのは、
『そろそろ気付いたら?』
というメッセージなのだろう。
と、オレ、昼飯を喰っているときに、思った。



つまり、
台風をやり過ごすのは、もう古いよ。
と、彼は言いたいのである。
ほらほら、台風いっぱいあげるから、苦しんでごらんよ。
苦しんで、苦しんで、何か対策してごらんよ。
傘?
……ボキッ!
もう一回差したら、折れて尖ったところを、突き刺しちゃうよ。
マジキレる何するかわかんねーよ、オレさぁ!
オメェ、先輩怒らしたら、マジヤベーって!
鑑別の人とメチャ仲良いんだぜ、先輩は。
3中の郡司さんと、先輩ちょーマブなんだぜ。
知ってっか?郡司さん。
と、彼とその子分達は言いたいのだ。



タチの悪い暴走族に絡まれているようなもんだ。
傘を差すなどという正論は、もう通じないのである。
人類をからかいたいのだ。多分。
はじめの内は、彼もビビっていた。
……傘って、すげえな。
しかし、彼だってバカじゃない。いや、バカなんだけど。
「傘差すなんて、オメェなめてんのかよ!」
もはや、問答無用。
彼はまた台風をよこす。



話が通じないのである。
「共存」という言葉が辞書に無いのである。
『勝ちor勝ち』
ジャイアニズム



目をつけられた人類は、もはや彼が飽きるまで、ちょっかいを出されるのだ。
台風のエネルギーを電力に使う。
台風を題材にした映画を創る。
台風の前日がお父さんの腕の見せ所。
あー、だめだめ。
そんな前向きなエネルギーじゃ、だめなんだって。
「テメェ、バカにしてんのかよ!」
彼の声が聞こえてきそうだ。
古い。
はっきり言うよ。
共存は出来ません。
今の時代は、多分こう。



屈する。
まいった。
媚びへつらう。



すいませんすいません。
と、彼がひくぐらい、謝っていたら、彼もそのうち飽きる。
もしくは、ひくぐらい、おどける。
台風のせいで、来てる服が飛んでいって、全裸で追いかけるとか。
わー。わー。服がー! って。



……もういいよ。……わかったよ。お前、つまんねーよ。
彼がこう言う日がきっと来る。




勝てないです、結局。
自然の猛威には結局、屈するしかない。
文明は延命。
全ては自然の手の中。
負けるときは、圧倒的に負ける。
民家は巻き込まれるし、人は流される。
そう出来ている。
死ぬときは死ぬよ。
だったら、面白くするしかない。
だって死ぬんだもん、結局。
彼を受け入れて、笑っていればいい。
そしたら、彼も飽きてくる。
台風起こして、笑っていられたら、そりゃもう、
『……台風いいかな』
って、なる。



昨夜、大きな地震がおきました。
オレは寝ていたのですが、その揺れで起きました。
かなりの揺れで、正直ビビったのですが、彼が喜ぶといけないので、
『でっかい目覚まし時計』
扱いにしました。



自然との共存を諦めた笑みが、一周まわって、もしかしたら、幸せなかたちなのかもしれない。
その笑みに、彼も、混ぜて欲しいと願うに違いない。
遥かなる父と母を想起させたオレの昼飯。
肉野菜炒め弁当(卵焼き付き)。
305円。