あたしの好きなトマトの赤は、あたしにしかわからない。

■おすすめのはじまり
そうでした。
本の貸し借りというものは非常に甘美なものでした。


アレを読んでもらいたい!
コレの感想をなんて言うのだろう!
貸すひとのことを考えて午前2時。本棚をひっくり返し、じたばたと格闘する。


本を漁りながら、ふと、大人になったなあと思う。
昔、ある女子からおすすめの本を貸してください。と言われ、
その当時、私が実におもしろいなあ!と思った
「マダム・エドワルダ」

マダム・エドワルダ (角川文庫)

マダム・エドワルダ (角川文庫)

『エロティシズムの巨匠、バタイユ先生』
という剛速球を繰り出し、ドン引きされたことを思い出した。
感想はもとより、本すら返ってこなかった。
自分がよいと思うものは、人もよいと思うに違いない。
うん。そうに違いない。
そんな風に確信していた私。


いやあ、恥ずかしさを通り越して、すがすがしさを覚えるくらい、いい思い出だ。


今、私は「おすすめ」という言葉を、
自分の意見を推し進めるという意味で捕らえていたあのころから、
相手にとってどのくらい有意義なのか、いう意味に考えられるようになりました。


本の貸し借りをするなら、まとめて3冊ぐらい貸してみることをオススメします。
1冊だけの貸し借りでは伝えられない線を超えて、まとめられたその本たちは、その人のことを考えて編んだテーマを訴える。
言い訳できない真っ裸。
まわし要らずのがっぷり四つ。
私という人間が正直に出てしまう、おすすめ本の組みあわせ具合。


そんな緊張が、非常に甘美。