目標のはじまり

社会と距離を感じる。
社会人になったら、きっとダイナミックな日々が訪れるものだと願っていたし、多分そうだと信じていた。『社会の仕組み』を体感することで、小さい歯車のひとつに過ぎないオレの行動が、いずれ大きなうねりとなっていくものだと思っていた。しかし、社会人になって、社会を動かしているような誤解がないことはないが、社会人になることで、結局「社会」って何? 何処にあるのよ?と、その実態が鮮明になるどころか、かえって、掌握出来ないおのおの幻想に思えて仕方がないのです。権力のある方の、政治力のある方の、その方だけの『コミュニティー』が、権力や政治により、『社会』扱いされているように思えて仕方がないのです。



冬のソナタ』を、オレは観たことが無い。
空港まで韓国スターを一目見に行くおばさま方を、オレは知らない。
それを、『社会』と呼んでいいものなのかわからないが、TVで流れる映像を、乱暴ではあるが、オレは『社会』と思っている。いや、TVで出る情報そのものが『社会』で無いのだが、
TVが煽動する小さな現象→それに煽動される日常→影響された集合体→『社会』
となり、上の図が完成する間にも、TVは煽動し続け、小さな現象がいつしか『社会』と刷りかえられる。
その時代の笑いは、TVが煽動するベクトルそのものだし、その時代の正義は、TVが煽動する細木数子だったりする。
そこに「進化」や「発見」があったりもするから、難しい判断ではあるのだが、たいがいは、権力と政治がTVを動かし、社会を動かすのだと思う。
いや、もっと、具体的に言うと。



会長の奥様の世間話。



これが『社会』。
会長の奥様は、家でよくパーティーを開く。そこには色々な会長の奥様が集まるのだが、そこでの話題が、
「『冬のソナタ』ご覧になって?」
インシュリンダイエットってご存知?」
「先日、細木数子さんに占ってもらって……」
などであり、そこには当然、TV局の会長の奥様も居るわけで、家に帰って、旦那様(会長)に言うわけだ。
「『冬のソナタ』来るわよ、貴方」
老婆心全開な奥様の助言に有効性が無いのを、会長は知っているが、女は強し、であるので、会長は逆らえず、翌日出勤したとき、制作部の部長を呼び出すのだ。
「君は『冬のソナタ』を知ってるかね?」
部長の奥さんは、この冬、出産を控えており、無事産まれたら、4人目となる。一番上は大学受験。二番目は高校受験。養育費は湯水のごとく、消えていくだろう。『冬のソナタ』は知っている。しかし、取り上げる必要があるだろうか? 私の局に携わる人間として28年貫いてきた正義とは一体……。
「『冬ソナ』特集組みましょう!」
それからは先の通り。



韓国ブームといわれる『社会』は、「日韓正常化」という、あざとすぎる理由ではないのだ。
会長の奥様の世間話。
ここから『社会』がはじまります。



こんなコミュニティーが、普通の生活を営むオレに届くわけがない。
社会と距離が遠い。
当然です。



社会人になると色んなことを知る。



Plan-9「男前は、会長の奥様達のパーティーに行く」



社会を踏まえ、社会を語る。
相当な男前だと思う。