石投げのはじまり

「え〜、マジでぇえ? つーかさぁ、この前原宿行ったときさぁ〜」
(全て語尾上がる)
カナダ人K君の言葉。
Tシャツから盛り上っておる胸筋の言葉。
ある作家さんが言ってたと思うんだけど、
「外国語を喋りたいなら、外人と寝るのが一番早い」
そんなことを言っていたような気がする。

K君は日本に来て2年目になるのだが、ギャル語のイントネーションが完璧である。
しかも、ちょっと前のギャル語の語彙力に関しても、日本一になれるのではないだろうか?とオレは睨んでいるのである。
「マジ、やばいんだけど!」
胸筋をピクピクさせながら、K君は普通に笑うのだ。
ちょっと北関東訛りなのも見逃せない。

ここまでくると、突っ込みどころが多すぎて困る。
彼女のこと聞きたいし、それは明らかに女子高生なんだろうけど、カナダ人相手にギャル語を譲らない日本女子のこと聞きたいし、茨城に興味を持ったきっかけとか知りたいし、そもそもK君はそんな日本文化を学びたかったのか?と問い詰めたくなるし、イントネーションがオカマよりなので、K君自体のセクシャリティに頭を抱えたりもする。ってか、この胸筋を目の前にしてその問いはあまりにも危険だと思ったりもして。
そんなグローバルなカオスの中、K君はモスコミュールを頼んだりして、刺身を食べるのだ。
処理速度が追いつきません。
K君は夏休み、国に帰るそうだ。
K君は外人のいかがわしいところのダイジェスト版なので、日本に帰ってきたらまた飲みに行きたい一人である。
しかし、
「それ、ありえないしーぃ!」
とか、タンクトップで言われたりすると、
K君自体がありえないと素直に思ったりして、
K君はカナダで日本人留学生に石を投げられたりしないかと、オレは今から心配です。
日本人が石を投げる機会なんて、こんな時しかないと思うのだ。